恋する段差ダンサー

ハイクの投稿をまとめて記事にしていました。

いにしえの築地しぐさ

先日こんな増田がアップされ盛り上がっていました。
anond.hatelabo.jp

ブクマで書いたように、私は築地の魚河岸でバイトしていたことがあります。店名バレを防ぎたいので、主な仕事内容は「高級魚と言われる魚の洗浄」「高級で珍しい魚を解剖してキモを取り出す」とだけ言っておきます。

そんなわけで懐かしくなり、お店をググったりしてみたのですが、あまり情報がなくて、残念ながら現在の様子は知ることが出来なかった*1
記憶では、社員で偉い人が終電で出勤とか、午前2時にタクシー出勤とかしてた。自分らバイトは始発で。午後2時ころには上がれたんじゃなかったかな。終わってバーに行く人がいたり(午後からやってる店)。そのため朝からガチガチにヘア決めてたりする職人さんもいた。

社員以外のメンバーは、流れ者のバイトとか、荒くれの河岸職人みたいのばかりだったから、消息を調べようにも「いったい今どこで何やってるんだろう…」って感じだから無理だろうな。
そもそも数あるバイトからわざわざ魚河岸を選ぶとか、その時点で「人として特殊」だと思うから、やっぱり何かありそうな人ばかりだったよね*2

上記の増田の内容も、そんな「不器用だが職人気質な」魚職人たちの様子が描かれてて「そうそう。わかるわ」と思ったのよね。


まあそんな感じで、自分の懐かしい記憶を辿ったりしながら、ブクマコメントをゆっくり見ていたら、こんなものが貼られているのに気づいた。
togetter.com
このまとめは一体どういう趣旨で作られたのか、今ひとつ把握しないまま「そうそう!懐かしい。このままだよー」などと懐かしみながら読んでいたが、途中で、どうやらこれは「批判目的」というか「問題提起」としてまとめられたようだと気づいたのよね。

そっか!普通の人は「これは異常じゃないか?」って思うのか!

私は、働いてた当時も今回読み返したときも「そうそう!こうだった」と思っただけで「これが当たり前」だと思っていたのだ。だって「これが普通」だったんだもの。誰も疑問に思わない。私も、最初はビックリしたかも知れないけど、すぐに慣れて「こんなもんだ」と思って働いてたはず。むしろ、こういうことに慣れていくことが「一人前になっていくこと」だと思わされてたフシさえある。
さっきも書いたように、一癖も二癖もあるような人々で、荒くれ者の職人が「オトコっぽく」働いてる現場ですよ。さながら究極のホモソーシャル現場と言ってもいいのではないだろうか。だから自分も「これで普通」だと「普通に思ってた」のだ。

それが外部の人の目から見ると、異常に見えたんですねえ…。そうだったのか。

今思えば、上記のまとめ内で指摘されてるような問題点を現場で見ていながら、なぜ自分は「不衛生だ」とか「常識としておかしい」というように 思わなかったのだろうか。
慣れてしまっていたからだけではない。どこか心の底で「彼ら職人の 判断 を信じていた」のではないだろうか。くわえタバコでも、床に放置されてても、引きずったりされてても「プロの職人がやってるんだから、これくらいは大丈夫なんだろう」と思い込んでいた*3
まあ確かにそうなんである。これらを買った人々が、無加工でこのまま食べるなんてことは、そうそうないことで、その先の魚屋やスーパーでキチンと処理や加工などされれば、衛生的に問題なくなるんだろう、などと呑気に思ってたんですよね。

これに関しては今もわからない。「これくれぇ デェジョブだよ」と彼らが言うなら、それでいいのかも知れない。でもそれはそれとして、現代の衛生観念には合っていないことも事実なのであり、そう考えると、ちゃんと変わっていかなければならないんだなあと改めて思ったのな。しかし現場にいて外に出ないと、その感覚が麻痺してくる。そういうことなんだと。これはあらゆる業界に言えることですよね。


ちなみに。
自分自身が このバイトで一番きつかったのは、実は「ターレ排気ガスでしたよ。

早朝の魚市場なんか「爽やかで新鮮なイメージ」あるけど「ぜんぜん違う」ね。「排ガスの充満した怒号の飛び交う戦場みたいな場所」だったよ。その感じは上記まとめでも少し判ると思う。でも「それで普通だと」思ってたんだよ。

まあでもいい経験だった。普段ぜったい出会うことのないような人々、ああいうの好きな人々と触れ合えたのは、人生としてすごくおもしろかったんじゃないだろうか。

色んな人がいる。それがわかっただけでも、とてつもない収穫だったなと。


★おまけ 〜 築地訪問(2011年)*4

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*1:お店自体は存在しています

*2:自分もやっぱり癖のある知り合いからの紹介

*3:実際、新入りはガミガミ怒鳴られていたし、事細かに注意もされていた。決して衛生的にズボラだったわけではないと思う。長年の勘で「これは大丈夫だ」という基準を、それぞれが持っていたのだと思う

*4:バイト先を訪ねたが営業が終わっていた

いにしえの日本しぐさ 2

実家で発見したお宝シリーズ。その2です*1
前に「70年代の絶望感」について書いたとき*2、その中で「メディアや雑誌で危機感を煽られてた」みたいなことを言ったのです。その記事を書いた時は、あくまで自分の「幼少の頃の記憶」で書いたので、「たしかにそうだったとは思うけど確証があるわけでもない…」みたいに思ってたのですね。

ところが、その後、実家の屋根裏を奥深く掘っていきますと、なんと!それに該当すると思われる本が出てきたのです!おそらく自分の記憶もこのとおり、この本で間違いないと思いました。なので早速ご紹介します!写真は拡大できます。


★少年朝日年鑑。
昭和49年ということは…1974年!
前回の「中一時代」と同じ年です!
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★ココでご注意!ちょっと「リアルな写真」が出てきます!
苦手な方は見ないほうがいいと思います!










★公害の先進国
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日本中が公害に侵され、絶望感が示されます。


水俣病の20年

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これは本当に見るのが辛かったです。
ここで20年…。
ということは現在は「64年目」ということになります。


★患者さんの様子
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これを発見したあと水俣病に詳しい方に話を伺いまして、ココに出てくる方々はみんな、現在もよく知られてる方々だろうということでした。

公害病

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こういう日本でした。



いかがだったでしょうか。内容は確かに記憶通りでした。しかし「知ってた」とは言ってもですね、こうやって改めて見てみると、これらの画像に「やっぱり」新たにショックを受けるものですね。いい大人の自分が、しかも初見ではないはずなのに、これだけ衝撃的だったわけだから、この本の想定読者である「当時の少年」は、いったいどう感じたのでしょうか。

先程の「水俣病に詳しい方」からお話を伺った際、「今だと精神的ショックのことが考慮されるから、小学生にこれを見せるというのはありえない気がする」と仰っていました。事実を知らしめるのは大事だけども、だからといって、子供相手に何でも見せていいというわけではない。と。例えば原爆資料館などもそうですね。トラウマになるから十分配慮する、というのが今の倫理観ではあると思います。
しかし、長崎の方にこれらを見せたとき「自分らは長崎で、子供の頃からこれよりも もっともっと酷い写真 をたくさん見せられた」と言われ、現実は直視すべきだみたいなことを仰っていました。それもたしかに正しい気はします*3

僕自身、これらを子供の頃に見て、先のブログ記事にも書いたように「地球は終わっていくんだ…」という終末感を煽られたのも事実です。また、現実の自分の周りについて(北海道でしたが)、これほどまでではないにしろ汚染はあったし環境意識も低かったというのは事実として記憶があるので、自分と関係ない、遠いどこかの話とは「思っていません」でした。

また当時タイミングのいいことに、楳図かずお氏の「漂流教室」というマンガが連載されており、それがまた「地球の終末感」をたいへん煽ったのですね。今読み返すと、あれらはフィクションの一部として捉えられますが、当時リアルタイムの日本で生きてて、こういう現実を実際に見ていた身としては、「じゅうぶん有り得る未来」で、決して空想の話とは思えなかったのです。

よく当時の風潮として「ノストラダムス」の影響について語られますが、子どもにとっては、難しいノストラダムスみたいな本よりも、テレビやこうした本で取り上げられる「酷い環境問題」のほうが、よほど不安感を煽られ「自分たちは滅んでいくんだ…」という気分にさせられたのが事実だったのです*4

「少年朝日年鑑」ということは。まあ「朝日」なんですよね。そこを捉えて殊更なにか言う人もいるかも知れません。しかし当時の日本は「高度成長期」で、国が経済的に潤うならば他の全ては犠牲でもいい、というような社会でもあったのです*5。そういうときに、当時の若者、ちょうど団塊世代くらいだと思うんですが、彼らが「政府なんか信用できるか!」と怒るのも当然の流れだったし、今の「いわゆる左派」の人々が今もそれを引きずってるのはわかる気がします。彼らにとってのトラウマなんですね。


前回の「女性だけの街」記事もそうだけど、あれから「44年」も経って、今の日本が当時と「どこか変わった」のか。当時これらを読んでいた少年少女、いまアラ還とかだと思いますが、偉くなったり大人になった彼らの現在の意識はどうなっているのか。

そういう事を考えていくと、日本という国のスタンダードというか「日本しぐさ」について、いろいろと見えてくる気がするのです。そんな発見でした。

*1:karamandarine.hatenadiary.jp

*2:karamandarine.hatenadiary.jp

*3:ココには載せなかったが長崎のリアルな原爆被害写真も掲載されていた。

*4:他にもNHKでこういう番組がオンエアされていた。→ 70年代われらの世界 - Wikipedia

*5:富国強兵の別バージョンに過ぎない。似た話は同じく、楳図かずお「おろち/眼」でも描かれている。

いにしえの日本しぐさ

先日実家に行きましたところ、中学1年生向けの雑誌に「興味深い記事」が載ってるのを発見いたしまして、是非とも皆様にも見てもらいたいと思いましたので、ここでアップしますね。写真クリック拡大して読んでみるといいですよ!


★世の中「女だけなら」いいのに
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ふむ。最近「女だけの国」というのも問題になったことですしタイムリーですね*1


★女子を何だと思ってるの。

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男子は女子のことを全くわかろうとしない。確かに中1ではありがち。

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この図解も実に「あるある」でよくわかりますね。


★チカン退治の極意

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通学女子の皆さんへ、気をつけるよう親切な記事も。


以上です。
日本のミソジニー社会ぷりは昨今とみに話題ですが、このように中学時代から「しっかり啓蒙」していかないと、よくなっていかないので、コレはよい記事かもしれませんね。

で、この雑誌は何かということをご紹介しますね!

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実はコレ旺文社の「中1時代」。
写真右上。なんと!1974年の本でした!

コレ言われないで見せられたら「今の本」かと思う!
自分も実家の屋根裏でこれを発見して見たとき、「え!?これって今じゃないの??」って一瞬思ったもん。1974年って。「44年前」なんですよ!奥さん!

この頃の中学生は…50代の後半〜もうすぐ還暦なのではないでしょうか。こんな昔から、こういうことが問題視されてて、雑誌で啓蒙までされているのに、44年経った今の日本。

それから個人的に「おお」と思ったのは、チカンの記事で「身内や知り合いからの被害が多い」と「既に」ちゃんと書かれていることです。これ今現在も、なかなか理解されていないんですよね。44年も前に既に専門家がこうやって書いてるのに。
もちろん自分も含めて何もやってこなかったというのが真実なんでしょうけど、それにしても、けっこう無力感あった発見でしたよね。

さてどうしましょかね…。

 

 

★続き

karamandarine.hatenadiary.jp